2020/05/21 16:36

これまでの足跡はこちらから↓

24歳、夏。オープンしたばかりのパン屋で菓子製造責任者になっていた。

半分意図してと半分偶然が重なり。

それでも夢だった菓子を作る人。として仕事が出来る事が嬉しく胸張って仕事をしていた。

もちろんそれは私個人だけの力ではなく

市場のおっちゃん、おばちゃんのおかげで手に入れたもので。

夢だった【仕事として】パン、菓子を製造する時間が増えても、

相変わらず市場の販売へ毎日出ていた。

その当時の店はそこでしか売り上げ出なかったしね。

【菓子を焼きそれを商品とする仕事】も、もちろんやりがいはある。

けれど【売り上げをちゃんと作る】という楽しさもこの市場販売で知ったのです。そこに、誇りさえ感じていました。

毎日、毎日、朝市場に行くと

「ゆきちゃん!おはよー!昨日な~」とパンや菓子を買いながら話してくれるおじちゃん。

「子供元気か?これ持ってき!」と気にかけてくれるおばちゃん。

結局、その“待ってくれている”状況に私自身が救われていたのです。


“待ってくれている”ってすんごい、すんごい、力になるのです。


自分一人のお給料の事や、

自分一人の夢の事だけでは

朝5時~夕方17時までなんて働けない。

私の場合はね。

誰かが信じて、待ってくれているから、

この仕事に誇りを持って進んでこれたのだと本当に思う。


そんなある日。パン屋オーナーシェフが急にタルトパイを作り出した。

シェフは私とは真逆で。

本当に器用な方で。だいたい何でも上手に形を整えてくる。味もウマい。

しかし、このnoteを見てくれたりエキサイトブログ の過去を読んでくれたりしている方は薄々察してくれているかと思うのですが。。

とても気分屋なお方で。。^^;

「ゆきちゃん、このパイタルトも市場で売ってきて。」と^^;

はい、いつもの、試作0回、思いつきで作り、テキトーに値段つけ。

販売は人任せ。。。(シフォンの時の矛盾。でも私はだからこそ勉強になったので良かったけれどね。


はいはい、わかりました。と雇われな立場なので

もうその時には慣れちゃって市場に持っていくわけです。

(こんな状況育ちだったからこそ、届けたいものや届けたい人、届けたい想いが明確でない菓子やパンを販売することにめちゃくちゃ違和感が働き、そぼくな。が出来上がっていったから今はとっても感謝しています。)

で、まぁ、もう信頼勝ち取ってるんで売れるんですよね。

売れと言われれば私は売らなきゃいけないし。

それがなんだかその当時私の中でモヤモヤして。

市場の方達は私を信頼して買ってくれているわけで。

この思い付きタルトパイに意図も何もない。

今は言葉にできるけれどその当時なぜこんなモヤモヤが苦しいのかわからなかった。

それでも、市場の方が喜んでくれたならそれが結果なので

本当は、作り手の意図なんていらないのかもしらないけれどね。。


で、それでた。

ある一人の市場のおっちゃんが、

「このタルトパイ、ホールで予約したい。」と言ってきた。

(市場で販売していたのはホールのカット売り)

シェフは今でも思うけれど天才肌で、意図はなくても腕はやっぱり器用で美味しいと思わせるものを作るのだとその時本当に思い知った。

早速、シェフに予約したい方がいると伝えると、すぐにOKが出て、その後、市場のおっちゃんに「この日にのこの時間に持ってきて。」と伝えられた。

ご予約の当日の日。

朝からいつも通りてんやわんやの厨房で、

もちろん無計画のシェフのタルトパイを無理やりいつものルーティンの中に詰め込んできた。(でもこれもいつもの事なのであんまり驚かない)

だがしかし。

先程書いたように、

試作0の無計画な為、、失敗されたのです。。

(思いつきで美味しいものは作るけれど再現性はない。のです、、意図が無いので、、)

でもこれね、

予約商品なんです!!!!

困るんです。めっちゃ。待ってるお客さん、いるんです。

で、無計画な為、多めにも焼いていなかった。。

私「どうします?お客さん待ってます。」と一応支持を仰ぎます。

。。。

今でも忘れないシェフの一言。

「ご予約の方にこのまま持って行って。タダでいいから。」


衝撃的すぎて今でも忘れない一言です。

(けれど逆に私の糧となっています。)


「信頼してご予約くれた方になんでそんな軽い対応が出来るんだ?」


「え、失敗した本人、ましてや店の主がお客さんに詫びに行くのではなく、私が全責任を終えと?」


「失敗もタダにしたら帳消しなのか?」


「タダにしたらお客さんのこれまでのご予約してくれた気持ちと時間はなんやったのか?」


「ホールで頼むという事はお客さんにとって特別を意味するのにそんな軽い対応でいいのか?」



頭の中でたくさんの言葉が一気に出てきて。


私、、

「タダにしたら全部OKなんですか?」 

「お客さん楽しみに待ってくれているのです。」

と、伝えました。

シェフ「ゆきちゃん、市場担当やろ。行ってきて。」


8年前の話です。

衝撃的過ぎて、悔しすぎて、今でも忘れられません。


所詮、自分の店ではなく雇われの宿命だと感じた瞬間でした。

理不尽さも受け入れて、この菓子を売らなくては届けていかなくてはいけない。

お客さんの気持ちなんて、信頼なんて、全無視です。

結局、シェフはお客さんの顔を見たこともないし、見ようともしなかった。

(テレビや雑誌ではシェフが市場販売する様子もあったけれど、あれは作り物で。そのころからテレビのドキュメンタリーも雑誌も好きではありません。)


これが商売なのか?


悔しさばかりで

お客さんに、ただただ、一人で誤りに言ったその日。

何もできない自分が悔しかった。



そして。

このやり取りはこの店にいた5年間。私だけではなく他のスタッフとも何回も繰り返されます。


その後もパンや、菓子の卸が増えていく中で

オーナーの無計画さ無責任さに何度も何度も私も、私以外のスタッフも

めっちゃ頭を下げてきました。

悔しかった。

スタッフがどれだけ体制を整えてもトップが変わらなければ変わらない。


店は生き物です。

けれどその生き物の心は、そこにいるスタッフ達のものではなく、

やはりトップの心が繁栄されます。

そんな事も身にしみてわかった日々でした。


お客さんが怒っているのは失敗したことじゃないんだ。

ちゃんと、精神誠意、ごめんなさい。と伝える事。

ちゃんと、プロとして価値あるものをお届けすること。

それはただ、単に無料にしたら解決する問題ではない。


謝っていく中で確実にそんなことはわかっていたのに。

所詮、雇われのスタッフが頭を下げて謝りにきたところで

相手側の怒りを倍増させるだけで。

肝心の店の主は絶対動かない。(失敗したのは本人であったとしても)


愚痴や苦労話みたいになってるけれど、これは事実で。そしてその苦労話を伝えたいわけではなくって。


ここで得た体験があるからこそ、

私は自分の店が

#ネット販売 であろうとも

一人一人のお客さんの背景を

ご注文をくれた文面やご住所、

SNSから探り、向き合うことは絶対に怠らない!と決めている。

顔が合わせられなくてもお客さんと心を通わせることは

こちらがやろう!と思えばネットでもある程度はできる。

【人】と【人】として向き合ってその土台の上で【店】として菓子を届けて行く。

そんな当たり前の事を絶対にこれからも続けて行こう。と

この頃から誓ってます。

悔しい経験が#焼き菓子屋そぼくな。のお客さんとの付き合い方に今も生きているのです。

この経験が無いと今のそぼくな。のお客さん達には恵まれていなかった。絶対。


【人】と【人】

この土台が無く

どうしても【店】と【お客さん】が先にあると、

私がその店で経験してきた冷たい出来事がおきてしまう。


もちろん逆もあって。

相手側(お客さん)に最初の土台の【人】と【人】が抜けすぎていて、【店】と【お客さん】しかない場合もある。

その場合はこちらがどれだけ向き合おうとしても【評価だけ】される。

なので必ずしも【店側が誠心誠意込めても】全てが相手側に受け入れられる訳では無い。というのも心に留めています。結構大切な事です。



お客さんはタダや無料が欲しいのではない。

誠心誠意、向き合うことで。


そこには【めんどくささ】【複雑さ】【効率の悪さ】も見方によったら伴う。


けれど、そこに【売るというそのものの価値はなんだろう?】という問いへの答えがある。

お金の金額だけでな言い表せない価値。

店全体の思考だったり意図からなされる行動こそが価値で

ただその行動の一つに菓子やパンがあるだけで。

菓子とパンをただ作って売る。だけの想いでは売るに価値は無い。

それはただの趣味で趣味ならそれでいいけれど

結局、菓子やパンを届けるけれど

その背景のその人となりの思考、行動が無いと

簡単に相手に見透かされる。

そして、店の土台はいとも簡単に崩れていく。


これは結局菓子のレシピの土台作りと同じ事で。


形にも残りづらい

この思考と考動、人と人とのやりとりの蓄積。という

価値に、売り値が付いていて。

そこをもっと店側(作り手)も誇りを持って

焼くだけではなく地道に(その一見、不要なめんどくさそうな事を惜しまずに行動することで)食べ手に届けていかないと、伝わらないな。何も。


と、

最初に【売るという事はなんぞや?】と実感した24歳夏でした。


読んでくれてありがとう!!

焼き菓子屋そぼくな。

ゆ季